たしかに、ずっとここにいられるとは思ってなかったけどさ……。

思ったよりも現実的なその言われ方に、連れ出してくれたといっても現実はすぐそこにあるのだと思い知る。


けれど、そんな不服そうな私に新太は伏し目がちに呟いた。



「それに、あんまり長く時間が空くと戻れなくなっちゃうから」



それは、私の心身が、という意味か。他のなにかが、という意味か。深い意味はわからない。

けれどそれ以上の追及をさせないかのように、新太は一瞬で表情を笑顔に戻してへらっと笑う。



「まぁその期間のうちは家じゅう自由に使っていいからさ。服とかは前に俺が着てた服があるからそれでいいとして……あ、下着はどうする?」

「……そういうこと女子に聞くとか本当デリカシーない」

「え!」



別にお風呂入ってる間にでも軽く洗濯と乾燥すればいい。……どうせ一週間だし。

あ、でもこの古い家に乾燥機があるんだろうか。あとでチェックしておこう。



そんなことを考えていると、少し開いたままの庭側の戸からは、ふわりと冷たい風が舞い込んだ。

少し冷たいけれど、体操後のあたたまった体には心地いい風だ。



……日当たりもよくて、風もよく入る、辺りは静かで、いい立地だなぁ。

そう感じてから、ふと新太に対する疑問を思い出す。



「ねぇ、この家って、新太のもの?」

「まさか。ここは俺のじいちゃんの家だよ」



新太の、おじいちゃんの?

まぁたしかに、学生である新太のものではないことはわかっていたけど……でもその当のおじいちゃんの姿は見えない。


そのことから少し驚く私に、新太は目玉焼きの半熟の黄身をくずして、お皿に黄色い水たまりを作る。