「ねぇ。私……ここに住んでも、いいの?」



突然の私の問いかけに、新太は右手に箸を、左手に茶碗を持ったまま、「うん」と躊躇いなくうなずく。



「なぎさ、昨日言ってたでしょ?『連れ出してほしい』って」

「……うん、言った」

「さすがに異世界に、とかはファンタジーじゃあるまいし無理だけどさ。この家でこれまでと違う生活をするくらいならできるから」



今までいたあの街とは違う場所にある、この家で、これまでとは違う生活を。

……たしかに、異世界に行くほどではなくても、大きな変化の先へ連れ出してくれたのかもしれない。



納得していると、新太は「ただし」と言葉を付けたし、左手の茶碗を置くとピンとたてた人差し指で『1』を示す。



「期間は1週間まで。それより前になぎさが帰りたいって思えば帰っていいけど、それ以上はうちには泊めない」

「えっ!?期間があるなんて聞いてない!」

「うん、今初めて言った」



き、期間?しかも1週間だけ?

まさかの後出しの条件に、私は眉間にシワを寄せた。

いかにも不服といった感情を顔に出す私に、新太は「まぁまぁ」と宥めるように苦笑いをみせる。



「だってね?さすがにあんまり長引くと……ほら、なぎさの親が捜索願とか出したら俺、未成年者誘拐の罪で捕まっちゃうから」

「どっちにしろもうすでにアウトだと思うけど」

「1週間以内に戻って、なぎさが『友達の家にいた』ってくらいで済ませてくれれば大丈夫!」



『というか、そう言ってください!』とでもいうかのように新太は困った笑顔で手を合わせた。