「よし、んじゃ朝ごはんにしますか!なぎさ、おいで」

「え?」



歩き出す新太に、私はトラを床の上に戻すと、呼ばれるままにあとをついていく。

すると、縁側から障子を一枚開けた先には広い居間があり、さらにその奥には小さな台所があった。



「ガス台がIHじゃない……」

「わぁ、現代っ子の発言」



焦げ付いた古いガス台や給湯器、いたるところが自宅とは違くて驚いてしまう。

そんな台所をキョロ、と見渡せば、台の上には目玉焼きとウィンナーがのったお皿や、小鉢に入ったお新香など、朝ごはんの定番メニューがすでに用意されていた。



「このおかず、居間のテーブルに運んでいってくれる?今ごはんとおみそ汁持っていくから」



言われたままに、おかずが乗った皿を居間にある大きなテーブルへと運ぶ。けれど、どこに置いていいか迷ってしまう。

すると続いて、ほかほかのごはんとみそ汁を持った新太が来た。

大きなテーブルの右端に向かい合って置かれるその茶碗に、合わせるようにお皿を置くと、自然と私と新太は向かい合って席につく。



「よしっ、準備完了!いただきまーすっ」

「……ます」



元気よくいただきますをする新太に、私は適当に流してしまおうとするが、そんな小さな声も聞き逃さぬように彼は「こらこら」と注意する。



「流さないでちゃんと言う!『いただきます』!はい!」



……面倒くさい、っていうか、口うるさい。

そう思うけれど、口を尖らせる目の前の彼が、私がきちんと言うまで注意を続けるだろうことが簡単に想像ついて、そっちのほうが面倒なことに気付いた。



「……いただきます」



渋々言ったそのひと言に、新太は頷き、ようやく箸を持って食事をはじめる