ていうか、近い……!

ぴったりとくっつく自分の背中と新太の体。おまけに長い指で腕まで掴まれて……。



昨夜あれだけしがみついてバイクに乗っておいて今更かもしれないけれど、近い距離に意識していなくてもドキリとしてしまう。



「わかったわかった!自分でやるから離して!」



観念したように声をあげた私から手を離すと、新太は笑って私の隣でラジオ体操を続けた。

それを見よう見まねで、自分も必死に腕や足を動かす。



……ていうか、なにこの光景。

年上の男とふたり、大きい家の庭でラジオ体操って……しかも外寒いし。

びゅう、と吹く風に寝癖ではねた茶色い髪が揺れる。



見上げれば、頭上にはのぼる太陽。

青い空には鳥が飛び、家のすぐ近くの道からは小学校へ向かうのだろうか、通学中の子供たちの声がする。



思えば、こうして明るい時間に外に出たのは久しぶりかもしれない。

太陽を見上げるのも、風に触れるのも、じんわりと汗をかくことも……久しぶり、だ。



部屋から出たくない、誰と接することもしたくない。そう思っていたはずなのに。

部屋にいる時よりもずっと、呼吸がしやすいことに気付いた。