「ずっと、誰かの力になりたいって思ってた」
誰かの力に、なりたい。
声に表されたその願いに、嫌な予感が増していく。
「今まで、なぎさに嘘をついていたんだ」
「う、そ……?」
「あの日、なぎさと出会った日。じいちゃんの墓参りの帰り道に、トラとはぐれた俺は住宅街を駆けていて……横断歩道のところで、トラと女の子を見かけた」
新太が改めて語り出すそれは、あの日の出来事。
女の子……つまり私が、トラと出会った時のことだ。
知りたい、けど、知りたくない。
どうしてか嫌な予感がして、その言葉の続きが怖い。
けれど、そんな私の思いも構わず新太は言葉を続ける。
「突っ込んできた車に轢かれそうになったトラを、その女の子は庇ってくれて……危ないって、そう思った俺はその子を庇って、車に轢かれた」
「え……?」
新太が、轢かれ、た?
だって、あの時私は轢かれていなくて、ひとりで転んで気絶して、そこを新太が助けてくれたって、そう言っていたのに。
それが嘘?
なんで、どうして?
笑えないよ、くだらないこと言わないで。
そう笑い飛ばすことさえさせてくれず、新太は真剣な顔で私を見た。