「……うん。驚いたり、戸惑ったり、怖かったり、泣いたりもしたけど……楽しかった」



楽しかった、よ。

いつも、新太が笑ってくれたから。

優しい手で頭を撫でて、心に寄り添ってくれた。沢山の言葉を与えてくれた。

楽しかった、幸せだった。この胸に希望が芽生えた。



その気持ちを込めて頷いた私に、新太は嬉しそうに笑う。



「この先の人生もきっと、楽しいことはいっぱいあるし、愛しいものとも出会えるよ。生き方だって、ひとつじゃない。選べる自由が、どこにだってころがってる」

「……うん」

「だから、頑張るんだよ」



細められた瞳に、夕日のオレンジ色が輝く。

けれど、その目はどうしてか、とても切ない色をしていた。



……待って、新太。

ねぇ、どうしてそんな言い方をするの?

なんでそんな、全て私に託すような

自分には未来がないかのような

そんな言い方を、笑顔でするの。



嫌な予感が胸によぎり、私も海に入ると新太の手をつかんだ。

それは、ここに彼を引き止めるかのように。



「新太は……?」

「え……?」



その言葉に、その目は驚いたように開かれる。



「新太にだって、明るい未来は待ってるよ。だから、諦めないでよ……やり直そうよ、一緒に頑張ろうよ」