するとその時、ザザン、と寄せた少し大きめの波が、波打ち際で立ち止まっていた私と新太の足を濡らした。
「うわっ、濡れた!」
「……新太がこんなところで立ち止まるから」
「俺のせい!?」
スニーカーの中までびしょ濡れだ。
責任を押し付ける私に、新太は笑ってそのまま靴も脱がずに海へ踏み込む。
「って、新太。もっと濡れるよ」
「これだけ足濡れたら全身濡れても同じでしょ」
「もう……帰りどうするの。それに風邪ひいてもしらないから」
どう見ても海水は冷たそうだし、以前自分で『この時期に海に入ったら風邪ひくよ』なんて言っていたくせに。
最後まで自由な人だと、呆れたように笑った。
ざぶざぶと小さな波を蹴りながら、新太は海に入っていき、膝下まで海につかってしまう。
「ねぇ、なぎさ?」
「なに?」
「1週間、楽しかった?」
海につかりながら、砂浜に立つ私に届くように声を大きくして問いかける。
新太に出会って、1週間。
逃げたい気持ちから始まったこの生活が、『楽しかった?』なんて……そんな分かりきった答え、聞かないでよ。