「なぎさ」
すると、不意に新太が足を止めて私に差し出したのは、ピンク色のイルカのキーホルダー。
差し出されたそれを、条件反射でつい手に取った。
「かわいい……けど、これなに?」
「さっき売店で買って来た。そっちはなぎさのね」
「え?」
そっちは、?
その言葉の意味を問うように見ると、新太はポケットから青いイルカのキーホルダーを取り出し見せた。
まるで、『こっちは俺の』というように。
つまりそれは、おそろいのキーホルダーということ……。
「いつの間に買ってたの?」
「トイレ行ったついでにね。思い出だけじゃなくて物もなにか残したいなーって思って」
そう考えて、わざわざ買ってきてくれたのだろう。
こうしてまたひとつ感じる新太の優しさが、うれしい。
「いいの?もらって」
「もちろん。お守りだよ。俺にとっても、なぎさにとっても」
それはこれから先、お互いの日々に戻っても、切れることのない絆のように。
彼の思いを抱きしめるように、私は手のひらの上のキーホルダーをぎゅっと握りしめた。
「……ありがとう。大切にする」
大切に、するよ。
キーホルダーも、言葉も、想いも。