それから私たちは、水族館の中を隅から隅まで余すことなく見て回った。
イルカショーでは頭から水をかけられて笑って、ふれあいコーナーでは恐る恐るウミガメに触った。
ごはんを食べてからペンギンを見て、アシカに癒されて……。
『今月の特集展示』という月替わりのコーナーに展示されていた爬虫類を見て、私は絶叫し、新太は楽しそうにはしゃいだ。
楽しい。
その想いとともに、ずっとこの時間が続いてほしいとも思った。けれど現実は無情にも、あっという間に時間が過ぎてしまう。
「はーっ、楽しかった!」
「うん、楽しかった」
水族館の大きな時計が夕方4時を指した頃、満足した笑顔を見せながら私たちは水族館を出た。
建物を出てそのまま歩いて行くと、すぐ裏の海辺につながっている。
誰もいない砂浜を歩くと、柔らかな砂に足をとられそうになる。
「もう夕日が傾いてる。冬だなーって感じだよね」
その言葉につられて見ると、目の前の空には真っ赤な夕日が沈み始めている。
水面にオレンジ色の光が輝いて、私と新太を赤く照らした。
陽が沈みだす。
つまり、もうすぐ終わりがやってくる。
1日の終わり。新太と過ごす、日々の終わり。
つい数日前まで恐怖でしかなかった夕焼けが、今はこんなにも、この胸を切なく締め付ける。