「彼女がいない人に言われても。説得力ないし」

「うっ!!」



なんて、またかわいげのない言い方。

だけど、いつか誰かを好きになったとき、か……。



一緒にいたい、愛しい、その気持ちに思い浮かぶのは新太の顔。

今、新太に感じている以上の安心感やくすぐったい気持ち。これ以上の気持ちを感じられる人となんて、出会えるのかな。

出会えない、気がするよ。



そんなことを言ったらきっと新太は『未来はわからないよ』って笑うだろうから、思いは胸の内に秘めたまま、言葉にせずに飲み込んだ。



「新太、行こ」



小さなひと言とともに、初めて自ら差し出した手。

私の白い手のひらに新太は一瞬驚いて、意味を理解してから、笑みを浮かべて手を取った。



ぎゅっと力を込めて握ると、今までで一番彼を近くに感じられた。