嫌いじゃないから、付き合えば好きになれるかもしれない。
そんな気持ちで相手の告白に頷いた。
でも結局好きにはなれなくて、こっちの無関心は相手に伝わってしまうものらしく、結局すぐ去って行ってしまう。
そんな話が自然と広がり、『男なら誰でもいいんでしょ』と、また嫌な目で見られた。
それを繰り返し、トドメに吉田くんの一件で、異性と関わると嫌なことに繋がると思うようになってしまった。
「別に、知らないままでいいけどさ。恋したいとか思わないし」
ひねくれたように呟く私に、新太は「そんなこと言わないの」と頭をくしゃくしゃと撫でる。
「いつか絶対分かる時がくるよ。一緒にいたいとか、愛しいとか思える人と出会えた時に、これが恋だったんだなって気づけるはず」
一緒にいたい、愛しい、そう思える人と?
新太の目をじっと見つめると、その目もしっかりとこちらを見つめてくれた。
「その想いに気づいたとき、過去に引きずられたらダメだよ。これまで嫌な思いをしてきたかもしれないけど、だからって自分で未来を決めつけるなんてもったいない」
そう言いながら優しく微笑んだ新太に、胸の奥では、ドキ、とこれまで感じたことがないような音が鳴った。
柔らかく、あたたかい、くすぐったさを覚える感覚。
小さな芽が出るような気持ちに、染まる頬を隠すようにふんっと顔を背けた。