「新太はここ、何回か来てるの?」
「うん、まぁね」
「へぇ……誰と?」
一緒に水族館にくるような相手。それらから女の子を思い浮かべてたずねると、新太はそんな私の心を読むようにふっと笑う。
「子供の時にじいちゃんと。なに、彼女と、とか思った?」
ぎく、と鳴る胸の音を隠すように「別に」と不機嫌な返事をしてしまう。
そんな私の態度に新太はおかしそうに笑って、ぽんぽんと私の頭を撫でた。
「悲しいことにもう3年以上彼女なんていないし、バイトやら勉強やらで彼女なんて作ってる暇なんてありません」
「……聞いてごめん」
「って謝らないでくれる!?余計傷つくんだけど!?」
……なんて、かわいげない言い方をしながら、ちょっと安心してる自分がいる。
って、なんで安心?
別に、新太なんてただの同居人っていうか、それ以上でも以下でもなくっていうか……。
そう心の中で否定してから、ふと思う。
友達とか、家族とか、それ以上の『好き』という気持ちを自分は知らないこと。
「……私、恋ってよくわかんないんだよね」
ぼそ、と小さな声で言ったひと言に、新太は不思議そうに首を傾げる。
「そうなの?」
「うん。付き合った人はいても好きにはなれなくて、結局すぐ別れて……揉め事の火種になるだけだったし」