「なぎさー、準備できたー?」

「うん、今行く」



そんな夜を越え、迎えた朝。

今日もラジオ体操と朝食を済ませ、午前10時を過ぎた頃、私と新太はふたりで家を出た。



今日は、バイクではなく歩きで、道を行くこと15分ほど。私達は『江ノ島』と書かれた駅前で足を止めた。



「意外と近いんだね、江ノ島」

「うん。歩くと散歩にちょうどいい距離でしょ」



電車で来ればひと駅ほどの距離だから、もっとすぐだったかもしれない。

けれど、時間をかけてゆっくりとこの町の空気を吸っておきたかった。

そんな私たちを見守るように、今日は冬にしてはあたたかな晴れだ。



7日目の最終日、私と新太がふたりで歩くのは、新太の家からほど近い場所にある観光地・江の島。

『最終日だし遊びに行こう』と、新太の提案で、江ノ島駅から10分ほどの距離にある水族館へ向かうべくやってきたのだ。



水族館の建物まで続く道のりを迷いなく歩いていく新太に、ついて行くように歩く。



「水族館久しぶりだなー。近いけど意外と来ないんだよね。なぎさは来たことある?」

「江ノ島は初めて。小学校の遠足で、鴨川の水族館には1回だけ行った」

「あー、遠足といえばあそこだよねぇ」