「…………………」
「天動説考えた人はさ、たぶん自分の世界をちゃんと大切にしてたんだよ。当たり前じゃん、よくわかんない広すぎる宇宙より、自分がいる地球が大事で、そこに住んでる人が大事で。地球が世界のまんなかにいるのは、すごく自然だと思う」
何も言えなくなった私に、颯は小さく目を伏せて、話し続ける。
彼の声はどこまでも伸びやかで、迷いがなかった。
「……俺は、『大きなもの』が動かす世界の小さな存在になるより、俺の大事なものを中心に動かす世界で生きたい。それがどれだけ小さい世界でも、俺はそこで生きていたい」
……意外だった。
颯がそんな風に考えていることに、驚いた。
だって颯は、誰かの世界の中心になれるひとだ。それだけの力を持っている。
だから彼はきっとこれからも、大きな世界で生きていくのだろうと思っていた。
華やかな世界のまんなかで、人を惹き付けるあの笑顔で、誰かを笑顔にしていくのだろうと。