『やっと、来れた…………』



ふたりで海に行ったあの夜、彼は海岸を見つめてそう呟いた。



『理央』



彼が私を名前で呼んだとき、それを当たり前のように感じた。



『本当は、他にも理央と行きたいとこ、いっぱいあるんだよ』



………彼は、きっと最初から私のことを覚えていた。


颯は今まで、何を思って私と一緒にいたの?


どうして何も言ってくれないの?




『俺の世界のまんなかにいんのは、理央だよ』



溢れた記憶と共に、流れ込んできた感情。


あの頃の私と、今の私。


どうしたって同じ人間だ。気づいてしまった。



私が、颯を好きだったこと。