「ぜんぶ、理央のおかげ」



颯は星空を見上げながら、ふっと笑った。


その横顔を見ながら、「そっか」と一言呟いた。


颯が私に影響されるだなんて少し信じられなかったけれど、純粋に嬉しくもあった。


自己否定ばかりしてきた私の生き方を、颯が肯定してくれたような気がして。



だけど、私とは逆だなと思った。



私は周りのことにばかり気をとられて、自分の大事なものを見失っていた。


颯と出会って、少しずつ自分の世界を取り戻し始めたところだ。



「……私も颯のおかげで、今、絵を描くのが楽しいよ」



静かに言うと、颯は嬉しそうに「そりゃよかった」と笑った。



「会えてよかったな、俺たち」



……うん。


あの木の下で、落ちた私を受け止めたのが颯でよかった。


会えてよかった。




「あー!でもやっぱ、自分の世界がいちばんだよなぁ」




引きこもっていたい、なんて言って立ち上がった彼の後ろ姿を、私は笑いながら見ていた。



「そうだね。天動説の方が正しかったらよかったのにね」



そう言うと、颯は目を細めてこちらへ振り返った。


その表情にドキリとする。


ああ、まただ。この違和感。