「……理央と会って、ちょっと考え直した。理央は、いっつも周りのこと気にしてるよな。最初はなんでそんなに気になるんだろって思ってた」



颯が小さく笑う。だけどそれは私を馬鹿にしているような笑い方ではなくて、どちらかといえば嘲るようなものだった。



「ちゃんと理央は、自分以外の人間のことも考えてるってことなんだよな。周りの空気とかに敏感だし、外の世界のこと積極的に知ろうとしてる。そのために一生懸命になってる理央は、カッコよかった」



………良く言いすぎだ、と思った。


私は、そんなに高尚な志を持っているわけじゃない。


ただ、自分の小さな小さな世界を守るためには、外にも目を向けなければならなかっただけだ。


根本的なところは、颯と同じ。


守り方が違っただけ。


だけど颯は、そんな私を『カッコいい』と言った。



「俺ももっと周りのこと見ようって思った。そしたら、俺のことほんとに大事にしてくれてる奴もいるんだなってわかって、もっと自分以外の世界も大事にしようって思った」



颯が週に三度のペースで美術室に来るのは、逆にいえばそれ以外の二日間は友達と遊んでいるからだ。


友達のことを『どうせ忘れる』と言っていた彼だけど、ここ最近は自分から彼らと関わろうとしているように見える。