「変わってるわね、君。美術に興味ないのにこんなとこいるなんて、退屈じゃないの?」


それは私も思ったことがある。


颯が初めて美術室に来たときは、ただの好奇心だろうと思っていた。


だけど彼は一ヶ月経っても、ここへ来るのをやめない。


私と先輩が何かしているとき、大体颯は私の作業を見ていたり、携帯を触ったり、課題をしたりしている。


一見つまらなそうには見えるけど、なんだかんだ来ているあたり、そこまで退屈には思っていないんだろう。


颯は苦笑いしながら、「まあ、正直興味はあんまりないっすけど」と言った。



「理央と先輩が絵描いてるのを見るのは面白いし、なんつーか、好きなんですよ。この空間が」



落ち着くっていうか、と颯は言った。


颯の口からそんなことを聞くのは初めてで、驚く。先生は「へえ」と意外そうな顔をして、ニカっと笑った。


「そーかそーか。それならいーのよ。好きなだけいてちょうだい」

「ありがとうございます」


先生は機嫌よく、美術室の黒板の前へと歩いていく。


こちらへ振り返った颯と目があって、ドキリとした。