「………………」


心の中が、混乱した。ぐちゃぐちゃになりそうだった。


私が取り乱しても、彼は冷静だ。いつもそうだ。


颯はいつだってまっすぐ、綺麗で、私は情けなくて。



途端に、さっきまでの自分を嫌悪した。


色んな感情が渦を巻いて、この場から逃げ出したくなった。


颯に対する怒り、愛しさ、もどかしさ、切なさ。


そして、そんな颯を前にして、弱くしかなれない私の馬鹿さ。



「……俺、今日は帰るよ」


私が思い詰めた顔をしていたからだろう。彼は苦笑いを浮かべて、そう言った。


「……あの、颯」

「じゃーね、理央。また明日」


へらりと笑って、颯はこちらに軽く手を振る。私は何をいったらいいのかわからず、どうすることもできなかった。


彼が去ったあとの美術室で、私はしばらく呆然としていた。