前に見た、彼の透けた身体の一部を思い出して、焦りが増した。


今度こそ本当に、消えたっていうのか。


透明になっているだけ?


どうして見えなくなるんだ。私の目の前で、消えてしまうんだ。


何度も何度も、どうして。



「……っ颯、颯!!いるなら返事して、ちゃんと声出して!」



怖い、怖い。


突然いなくなるなんて、聞いてない。


まだ微かに吹いている風は私の髪を揺らし、涙がこぼれる頬を乾かす。


わからないことはたくさんあった。


知るのは怖い。


だけど今はなにより、颯が突然いなくなることの方が怖い。



「見えないの、ねえ、今、あんたのこと私、見えないんだよ!あんたは気づいてないのかもしれないけど、お願いだから、声出して!」



颯は、自分の透けた身体の一部に、気がついていなかった。


痛みとか違和感とか、そういうのがないのかもしれない。


それはそれで恐ろしい。颯すら気づかないうちに、私の前から消えてしまったら。



ーーそんなの本当に、冗談じゃない。