「………………」


颯の顔が一気に脱力する。私は子供たちに呆れた顔を向けながら、ため息をついた。


「……今、颯が喋ってたでしょ」

「なんだよー、キスしそーなくらい見つめあってたくせに」

「キ………っ」


突拍子もないことを言われて、思わず立ち上がった。ませた小学生たちは、ニヤニヤしながら私を見上げてくる。


キスしそうってなんだ。明らかにそんな甘い雰囲気じゃなかったでしょう!



ふいっと顔をそらして、ベンチから離れた。颯はそんな私を見て、苦笑いしていた。


私が座っていたところにすかさず男の子がひとり座って、颯に話しかける。その様子にまた呆れながら、近くで見ていた。



子供たちの笑顔の中心、太陽が光る。



古びた駄菓子屋の建物、ところどころ掠れたポスター。


昼下がりの晴れた青い空、柔らかな陽射しが彼らを包む。そばの木々がゆらゆらと揺れて、時折颯に灰色を被せていた。



………あ。

今だ、と思った。



すぐにトートバッグを肩から下ろして、中から画用紙と画材一式をコンクリートの上に広げる。


ペットボトルに入れていた水をバケツの中に入れて、筆を用意する。それからシャーペンと画用紙を持った。