「……意味わかんない」

「はは。ごめん、気にすんな」


颯は笑って、私の髪を撫で回した。また心臓が跳ねて、それが悔しくて、つっけんどんな態度で「ちょっと、やめて」と文句を言う。


だけど颯はしばらくの間、何故か嬉しそうに笑っていた。


………細められたその目がわずかに潤んでいたことには、気づかないふりをした。







それからしばらく坂道を歩いていると、やがて平坦な道に出た。


ぽつぽつと民家が建ち、その間をうっそうとした緑が埋めている。


通りにはこの辺りの子供たちが集まる小さな公園があり、木々の隙間からカラフルな遊具たちが見えた。


日曜日の午前、ちらほらと子供とすれ違う中、その店は空気に溶け込むようにゆったりと、そこに存在していた。



「ついた」



私が一言呟くと、隣で「おー、あれか!」と声がした。


古びた小さな木造の建物は、これはこれで趣があって私は好きだ。