「やー、なんかね、楽しくって興奮しちゃって、実はというともう完全に目が覚めとるんよ」

「へえ」

「多分戻っても、誰も起きとらんからつまらんしー」


言いながら、みどりは伸びをする。後頭部の寝癖がぴょんと跳ねた。


「あ!」

「なに」

「いいこと考えた!」

「……なに」


どうせ、みどりのことだ。きっとどうでもいいことに決まっている。

大して期待もせずに視線を向けると、みどりはにこりと笑ってみせた。




「日の出、見に行こ!」


「は?」


何故そんな考えが浮かんだのかはよく分からないけど、みどりは目を爛々と輝かせている。


「もうすぐ日の出の時間やし、ちょうど見えると思うし!」

「別に、初日の出じゃないんだし……」

「まーったく、柊はけちけちしとるねー」

「知るか」


そうは言ってみたものの、教室に戻ったところで眠れるわけでもない。

またさっきと同じように、耐えなければいけないのだと思うと、みどりの面倒を見るほうが楽なような気がする。


「綺麗やにー、朝日!」

「……」

「山と山の隙間から、こう、ぱあーって! ぱあーってなるんよ!」

「……行く」


ぼそりと呟くと、みどりは首を傾げた。


「ん?」

「仕方ないから、一緒に行ってやるって言ってんだよ」


改めてそう言うと、みどりの口元が綻ぶ。