それにしても、枕が固い。

蕎麦殻がぎっしり詰まっているらしく、いつも使っている枕と高さも違う。


「……達郎」

「んー?」

「お前、この枕で寝られる?」

「別に大丈夫やけど。なに、柊っていつもと違う枕やと寝れやんタイプなん?」

「……多分」


ぼそりと呟いて頷くと、達郎は笑った。


「ははっ、柊は神経質やなー」


いや、これで寝られるほうが凄い。

こんなの絶対に無理だろう、誰も寝れやしない。









――と、思っていたのに。









「ぐー……、かー……」


今、何時だろう。

寝ては起き、起きては寝て。そんな浅い眠りを繰り返している俺。寝る前、散々騒いでいた他のやつらは爆睡中。

ワタルに至っては、達郎の腹に片足を乗せながら、いびきまで掻いている。


「……眠れない」


がばっと身を起こした。達郎はワタルの足のせいで、苦しそうに顔を歪めているけど、起きそうな気配はまったくない。


どうしようか。

いびきはうるさいし、ワタルのもう一方の足はいつ俺の腹の上に乗ってもおかしくない状況だし。

とりあえず、この空間から脱出したい。



「……トイレでも行くか」


小さく呟き、そっと立ち上がる。

布団と人を踏まないように、静かにドアまで忍び寄り、上靴のかかとを潰して履いた。


一歩、廊下に出てみる。

ぺたり、自分の足音だけが、やけに大きく響いた。