「なんできょんが出てくるん!?」
「え、だって、……なあ?」
「うん、きょんちゃんのこと好きなんやろ?」
「ないないないない!」
「嘘やー、絶対好きやろ」
「きょんなんか関係ないし! そういうのじゃないしっ!」
いつの間にかワタルは包囲され、問い詰められている。
枕投げは一時中断されたらしいけど、さっき以上に盛り上がっていて、騒々しい限りだ。
ワタルが必死に否定するたび、周りはにやにやと笑みを深めていく。
達郎でさえも止める術がないのだろう、隣で苦笑している。
「告らんのー?」
「だから違うって!」
「きょんちゃん呼び出して来たろかー?」
「はあ!? 呼ばんくていいから!」
「ワタル、顔真っ赤やで」
「知らん!」
叫んだワタルを、けらけらと周りが笑っていたときだった。
「ちょっとあんたら、もう消灯時間過ぎとるんやけど!」
突然ドアが開いたかと思えば、顔を出したのは担任。
「雅子先生やん」
「消灯時間とか早すぎんのやけどー」
「子供はもう寝る時間ですー。ほら、さっさと布団直して」
「子供じゃねーし!」
口先で文句を言いながらも、みんな担任に従って布団を直し始める。
その矛盾した行動が何となく面白かったから、傍観していようかと思ったけど。