「……みどり」
「ふは、……ふっ、はい」
「お前、笑ってんじゃねーよ」
じろりと睨むと、ちんちくりんはけらけらと笑い出す。
「うーわ、まじでみどり嫌だ」
「ぬふふ、だって柊の足、もたもたしとんのやもん、もたもた!」
「……いつか絶対泣かす」
「物騒なこと言わんといてー、ふははっ!」
あまりにも楽しそうに笑うから、何となく自分が馬鹿らしく思えてきた。
つられて笑うと、みどりは満足げに口角を上げる。
さっきまでぼんやりしていたくせに。いつものように笑うみどりに、少しだけ安心して。
繋いだ右手の小指が、妙に気恥ずかしかった。
「うおおおお、くらええええ!」
キンキンと響く、甲高い声。それと共に飛んできた枕は、参戦していないはずの達郎に当たった。
「よっしゃ、たっくんに当たった!」
「いや、俺はやっとるつもりなかったんやけど。それから、もう少し静かに……」
「当たったああああ!」
「ワタル、布団ぐちゃぐちゃなんやけど……」
「いっえーい!」
「……」
数時間前に敷いておいた布団の上は、戦場と化している。
十数人しかいない三年の男子。参戦していないのは、俺と達郎の二人だけだ。