「手、繋ぐんだろ」
もう一度、右手をひらひらと差し出す。
「あ、うん」
みどりは頷いて、額をさすっていた左手を、再び差し出した。
その手をがっちり握るのも、何か違うような気がして。
小指だけ立てて、みどりに突き出してやった。
「……ん」
「ほ?」
「ん!」
早くしろ、と目で訴えればみどりもゆっくりと小指を立てる。
「こーいうこと?」
「……そーいうこと」
頷き、その小指に自分の小指を、そっと絡めた。
「ほらほら、柊くんみどちゃん、動いてってばー!」
ぐいっと相澤に左手を引っ張られて、それに従って動く。
「マイムマイムってイスラエルの民謡なんだってー!」
「ふーん……」
「知らなかったでしょー? まあ、そういうことにも興味持つのって、私くらいしかいないしねー」
自慢げに話して、ぐいぐいと左手を引っ張る相澤。
踊ったことはあるものの、所詮小学生のときのこと。覚えているわけもなく、見様見真似でついていくことに必死な俺。
「開拓地で水を掘り当てたことを喜ぶ曲でね、マイムが水って意味でー、ベッサンソンが嬉しいって意味だったかなー」
「へー……」
「ほーんと、奥が深いよねーっ! あ、それでね、確かこの振り付けはー……」
延々と続く説明を聞き流して、周りの生徒の足の動きを凝視する。
なんだ、あの複雑すぎる動き。
もたついていると、右隣から吹き出すような笑い声が聞こえた。