驚いて左を向くと、手を握っていたのは相澤で。


「……なに」

「え、何がー? あっ、もしかして手のこと?」

「うん」

「フォークダンスだからね、繋ぐのは当たり前だよー」


そう言われて周りを見渡せば、確かにほとんどの生徒は手を繋いでいる。だからと言って、こんなにがっちり握られている人はそうそういないだろう。

あー、でも、繋がないといけないのか。

仕方ない、と思いながら、右手をひらひらと差し出した。


「みどり」

「んー」

「……みどり、手」

「ぬ、え!」


目を真ん丸に見開いて、みどりは俺を見上げる。

なに驚いてんだ、こいつ。達郎とはしっかり手を繋いでいるし、驚くことではないはずなのに。

不審に思って眉間に皺を寄せると、慌ててみどりは自分の左手を出してきた。


「……どーぞ」

「繋ぐんじゃねーの?」

「……え、うん」


なんだ、この煮え切らない反応。手を差し出すだけで、まったく繋ごうとする気配がない。


「おーい、柊くんみどちゃん、動いて動いてー」


相澤の声で、みどりの手から目を逸らす。炎を囲む輪は、地味に回りつつあった。

そういえば、もう曲は始まっていたんだった。

右隣を見ると、まだぼんやりした様子のみどり。


「おい」

「んー」

「……おい、みどり」

「ふぬっ!」


空いていた右手でデコピンをすると、みどりは額をさすり、俺をちらりと睨むように見上げた。