「あ、由香とみどだ」
達郎の声に顔を上げると、さっきから姿が見えなかった由香とみどりが、小走りでこっちに向かってきていた。手を振る達郎に、二人が手を振り返す。
「さっきまでどこにおったん?」
達郎が不思議そうに聞いたけど、由香とみどりは互いに顔を見合わせて、微笑むだけだった。
「なに、気になるやんか」
「女子同士の話ですー」
「たっくんには関係ないですー」
「うっわ、その言い方むかつく」
そうは言いながらも、けらけらと笑う達郎。
周りはざわざわと騒がしく、至るところで笑い声が聞こえる。炎はぱちぱちと音を立てながら、天まで伸びていく。
「あ、たっくん、フォークダンスっていつからやっけ?」
「そろそろ始まるんと違うか?」
由香と達郎の会話に驚く。
フォークダンスするとか、聞いていない。
「みどり、フォークダンスってすんの?」
「あれ、知らんかった?」
「知らなかった」
練習してる素振りもなかったし、と付け足して言うと、逆にみどりが驚いたように目を見開いた。
「フォークダンスって練習するん?」
「練習しないで、どうやって覚えるんだよ」
「え、普通に」
「……」
「毎年やっとるからなー」
もうこの町には慣れてきたつもりでいたけど、まだまだ俺の知らないことがあるらしい。フォークダンスなんて、小学生のときの林間学校で一度やっただけだ。
「まあ、なんとなく踊っとけばいいやろー」
適当なみどりの返事に、一応頷く。