さて、何を言ったらいいんだろう。
名前を呼んでみたはいいものの、続く言葉が見つからない。
そんなあたしを察したのか、由香は小さく笑って、口を開いた。
「知らなかったでしょ」
何を、なんて。
あたしもその話をしたかったから、言われなくても分かった。
「……うん」
頷いて、聞いていいのかと躊躇いながらも、聞かずにいられなくて。
「……たっくん?」
「直球やねー」
微笑んだ由香は、否定しなかった。つまり、正解なんだろう。
「いつから?」
「うーん……、いつやろね。生まれた時からのような気もするし、つい最近のような気もする」
「そっかー……」
「気付いたら好きだった、ってことかな」
ずっと一緒にいたのに、あたしはこんなに眩しい由香の顔を知らなかった。
遠いと感じたのはきっと、由香があたしより何歩も前を歩いていたからだ。
そんな簡単なことに、今さら気付いた。