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「ゆーかー」


煌々と燃える大きな炎。それを囲む笑い声から少し離れたところに、由香は座っていた。

隣で体育座りをすると、顔を上げる。


「みど」


いつものように、ふわりと笑った由香。それに安心しながら、そっと口を開いた。


「ここ、蚊いっぱいやん」

「そうやねー」

「刺されとらんの?」

「太ももが痒いわ」

「あとでムヒ貸したろか?」

「うん、ありがと」


頭上に広がる空はもう紺色をしているのに、山のほうの空はまだ水色。綺麗なグラデーション。

こんな時間なのに、まだ少し明るいと思うのは、夏至が近付いてきているからだろう。

じとじとと纏わり付くような暑さの昼間に比べて、夜は随分と涼しくなった。


「ゆかー……」

「……なにー?」


そろりと、自分の足に視線を落とす。

白で、パステルピンクのラインが入ってるスニーカー。

爪先は何かに擦れたのか、茶色くなっていた。