「ほらほらー、言ってみ?」

「だから、しやんって!」

「きょんちゃんって、ワタルと仲良いよなあ?」

「ないないないないっ!」

「照れんでもいいやーん」


きょんちゃんを囲むみんなを眺め、女子って凄いなー、とぼんやり思う。

みんなの視線を一身に浴びながら、真っ赤な顔で否定するきょんちゃんは可愛い。


「好きなんやろ?」

「違うって!」

「えー嘘やろー」

「あ、そ、そういえば!」

「なに?」


「スミレ、スミレはどうなんよっ?」

「……私?」


逃れることに必死なのだろう、きょんちゃんは少し離れたところにいたスミレちゃんに話を振った。

きょんちゃんに注がれていた視線が、ゆっくりとスミレちゃんに移行していく。




「柊くん格好いいって、最近よく言っとるやん?」


突然出てきた柊の名前。それに驚きつつ、スミレちゃんを凝視する。

さっきまできょんちゃんを冷やかしていたみんなは、ターゲットを変更してスミレちゃんを見る。


「そうなんっ!?」

「確かに柊くん格好いいしなー!」

「実際のところ、どうなん?」


身を乗り出して、スミレちゃんに問い掛ける。あたしは枕を抱え直し、顔ごとスミレちゃんのほうに向けた。


「そうだねー……」


スミレちゃんは、少し考えるように視線を上げる。

くるくるの毛先が小さく揺れた。