「あのね、あたしらのクラスに転校生来るんやって!」
「……へえ」
「トーキョーから来るっぽいんよ!」
「ほう」
「すっごいやろ?」
胸を張ってそう言うとトシちゃんは、そうか、とだけ呟いた。
すごいって言ってくれるのを期待してたから、これにもまた拍子抜け。
張り合いがないなー。なにさ、クールぶっちゃって。
ぶうっと膨れてみたけど、トシちゃんはあたしに目もくれず、学ランさんに顔を向けた。
「だから、言ったやろ? この町は噂がすぐに広まるって」
「……はあ」
「どうすんの」
「どうするもこうするも……」
トシちゃんから煙草の匂いがした。畳は色褪せかけて、黄色っぽい。
何やら意味の分からない会話に疎外感を覚えて、あたしは麦茶を一気飲みしてみる。わざと氷の音を立てて、飲みきったよ感を醸し出したけど、それでもトシちゃんはあたしを見てくれないから、結局自分でおかわりした。
っていうか、色々すっ飛ばして考えてたけど、トシちゃんと学ランさんの関係って何だろう。
「……隠し子とか?」
「あ?」
思わず口をついて出た言葉。トシちゃんは、怪訝そうに眉を寄せてあたしを見た。
「誰が何だって?」
「だからその、学ランさんとトシちゃんの関係性について考えてたわけでして」
「俺まだ三十だし」
「こんなに大きい子どもいたのトシちゃん……!」
「だから違うっつの」
ぴしっとおでこを叩かれた。
じゃあ何なの、とトシちゃんを見つめれば、そんなあたしの視線を受けて、面倒くさそうにトシちゃんは言った。