「まー、仕方ないから、カレー餅やと思って食べよか」
「カレー餅……」
由香の声に頷いて、もう一度スプーンで掬う。
餅にしてはいささか柔らかいけど、そこはもう妥協するしかない。
「とろけるお米って初めてー!」
「みどは楽しそうやね……」
「あ、由香の作ったカレーは美味しいよ!」
「それはどうもありがとう」
微笑んだかと思えば、由香はご飯になるはずだった物体を一口食べて、眉間に皺を寄せる。柊に至っては、目を細めながらスプーンを口に運んでいた。
「今日はこのあと、何があるんだっけ?」
しかめっつらのまま、不意に柊が首を傾げる。由香はハーフパンツのポケットから、四つ折にしたプリントを出して読み上げた。
「一旦、自分の泊まる教室に戻って布団敷いたあと、キャンプファイヤーやね」
「そんだけ?」
「うん。あとは自由時間」
紙を仕舞った由香に、あたしはじゃがいもを飲み込み、口を開く。
「枕投げしよーねー」
「あー、はいはい」
「……小学生か」
ぼそっと聞こえた柊の声。
キッ、と睨みつけてみるけど、柊はあたしのことなんか無視で、スプーンを口に運んでいた。
枕投げをしないお泊り教室がどこにあるのだろうか、いや、ない!
「みど、睨むんはいいけど、さっさと食べやんと自由時間減るぞ?」
「うい!」
食べるスピードが遅くなってしまったのは、元はと言えば、たっくんのせいだけど。
自由時間が減るのは嫌だから、大人しく言うことを聞いておくことにする。