悪代官みたいに左の口角だけ上げて、にやにやと笑う柊。トシちゃんそっくりの笑い方だ。
そんな柊から顔を背けて、蚊取り線香に目を向けると、灰がぽとりと落ちていた。炊事場のざわめきが遠い。
「まあ、でも」
ふと声のトーンを落とした柊に、再び顔を上げると。
「俺は多分、後ろ姿だけで、みどりのことも見付けられると思うけど」
「……う、え?」
いきなりのことに驚いて、言葉を詰まらせていれば、柊は口元にさっきのにやにや笑いを浮かべて。
「だってみどり、特徴ありすぎるから」
「はい?」
「ちんちくりんだし、毎日寝癖付いてるし、貧乳だし」
「待て待て待て待て、それ、ただの悪口……!」
「はー?」
「デリカシーなさすぎやろ!」
発展途上中の女子に、こんなこと言うなんて、由々しき問題。
せめて微乳と言ってくれないだろうか。しかもそれ、後ろ姿に全然関係ないし。
「そんだけ特徴あるってことだ」
「な、なんか違う気が……!」
――でも。
でも、どうしてだろう。