炊事場のほうでは、各学年の生徒がエプロンを付けて、せわしなく動いている。
カレーは班別に作ることになっているけど、三年生はあたしたちみたいに係で抜けていたりするから、かなり大変だと思う。
まあ、あたしたちの班は由香とたっくんが作ってくれるから、全然心配はしていない。というより、由香に任せておいたら、大丈夫だと思う。
蚊取り線香は燃え尽きる気配なし。
たしか、一般的な蚊取り線香って、七時間くらいもつんじゃなかったかな。
「……」
「……」
「……、だから寝るなっつの」
「すみませんまじですみません」
まったく、柊さんは気が短いんだから。そんなに怒らなくても、と唇を尖らせて、また炊事場を見る。
そこにいる人はみんな、体操服の上からエプロンを着ていて、ここからだとあまり顔が分からない。
「お」
「なに」
「由香とたっくん発見」
「どこ?」
炊事場の奥のほう。
ちらちらと人の隙間から見える二人の後ろ姿を指差すと、柊は目を細めてその先を追った。
「あ、分かった」
柊がこの町に来て、まだ数週間しか経っていないのに、後ろ姿だけで判断できるようになったとは。
それだけあたしたち四人が、一緒にいることが多いってことだろう。