「……」
「……」
「……みどり」
「……」
「おい、起きろちんちくりん」
強烈なデコピンで目が覚めた。
う、痛い。
っていうか、今さらっと暴言吐かれたような気がするのは、気のせいかな。
「お前、よく寝られるな」
「いやはや、もう本当にすみません……」
空は雲ひとつない青空だ。昨日の夜に慌てて、てるてる坊主を作った甲斐があった。
「にんじんって皮剥くよな? え、そうやんな?」
「誰がこの玉ねぎ切ったんよー!」
「ちょっとこれ、水多すぎっちゃう?」
「カレー粉! カレー粉どこ?」
なんとも素敵な活気。
あたしと柊は、みんなが楽しげにカレーを作っているのを、少し離れたところから見ていた。
カレーと蚊取り線香という、独特な匂い同士が喧嘩して、決して良いとは言えない匂いがする。
ちなみに、ここは校庭の隅っこにある、炊事場だったりする。
「校庭広すぎんだろ……」
「この町は、土地いっぱいあるからねー」
「けど、どうしてこんなところに、炊事場があるわけ?」
「あー、なんか、ひと昔前までは夏休みに都会の人が来てたっていうのは聞いたことあるー」
「へー……」