……柊の父親? お父さん? ファーザー?



「そうなん?」


ぱちくり、瞬きして柊に問うと、柊は溜め息を吐いた。

どうやらこの家系は、溜め息を吐くのが趣味らしい。


肯定してるのかどうかは分からないけど、否定しないってことは、つまり、そういうこと?


「……柊パパさんでしたか!」

「そうだよー、柊パパさんねー」


よく焼けた肌。笑うと皺が寄る目尻。

改めて見てみるけど、柊とは似ても似つかない。

唯一、光が当たると栗色に見える髪の毛だけが、親子だという事実を証明していた。


「そっかー、親子かー」


呟くと、柊はまた嫌そうな顔をした。

こんな捻くれた子と、気さくなパパさんの血が繋がっているなんて、なんとも信じがたい。


「で、みどりは何しに来たわけ?」


微笑み合っていると、柊がそれを裂くように言った。


「あ、そうそう、駄菓子買いに来たんよー」


当初の目的を思い出してそう言うと、トシちゃんが頷く。


「うめちゃんか?」

「もっちゃんだんご!」


駄菓子の名前を言えば、トシちゃんはいつものように棚から取ってくれて。


「30円な」

「27円にしてよー」

「なんでそんな微妙な値段なんだよ」

「今日の所持金!」


ハーフパンツのポケットから、じゃらじゃらと小銭を取り出して、トシちゃんに見せる。

トシちゃんは溜め息を吐きながらも小銭を数えて受け取って。


「……仕方ねーな、ほら持ってけ」


ぽつりと呟いて、あたしをシッシッと追い払った。