知らないおじさまに遭遇した。


「お、この子が噂のみどちゃんかー」

「だ、だれ……!」


それは、帰宅後。

なんとなく駄菓子が食べたくなって。畳んであった洗濯物の中から適当に引っ張り出したTシャツと、学校指定の青いハーフパンツを着て、畑ひとつ挟んで隣の酒屋さんに足を踏み入れたときだった。

トシちゃんが店番してるのかと思ったら、まさかのおじさま。……どちらさま。


「それにしても、小さいねー」

「ちっさくないです、うっさいです!」

「うんうん、可愛い可愛いー」

「……へへっ」


なんだこの人、いい人だな。


誰だか知らないけど、悪い人ではなさそうな感じで。

普段言われ慣れていない褒め言葉に、へらっと笑っていると、家のほうからトシちゃんが顔を出した。


「あれ、みどり」

「トシちゃん!」

「おー、俊彦。みどちゃん可愛いな、馬鹿っぽくてー」

「へへっ、……え、あれ?」


これは、さりげなく貶されたのか?


ぼんやりおじさまを見ていると、トシちゃんが盛大に溜め息を吐いた。

そういえば、この人、どうして店番してるんだろう。

今更ながら、不思議に思っていると、着替えた柊が居間のほうから出てきた。


「おー、ちょうど良かったー」

「……は?」


おじさまが笑いかけると、眉間に皺を寄せて、ものすごく嫌そうな顔をする。

それを見たトシちゃんが、また溜め息を吐いて、至極面倒くさそうにあたしに言った。



「このおっさんは、柊の父親な」


「……うん?」