「柊、ポスカぶしゅぶしゅするのはもういいから、これハートに切って」
「……え」
「はい、みどもね」
「ういー」
こういうとき、しっかりしてる由香はすごく頼りになる。班ポスターくらいなら、言うことを聞いているだけで出来上がってしまうだろう。
シャーペンでうっすらとハートの形に下書きしてある、赤い画用紙。言われた通りにハサミを動かす。
「ハート……」
「柊さん、ハサミ全然動とらんよ」
そんなに嫌か、ハート。
渋る柊を促して、あたしはまたハサミを動かす。
可愛いけどなあ、と呟くと由香は同意するように笑った。
「ゆかー、赤のポスカ発見したー」
「ん、ありがと」
六班が持ってた、と付け足して、たっくんは由香に差し出す。
受け取った由香はすぐにキャップを外して、さっきまで柊がぶしゅぶしゅしていたプリントの裏にぶしゅぶしゅする。
インクが出てきたのを確認すると、ピンクの画用紙の下書きをなぞり始めた。
2、と大きく書いたのを縁取っていく。
「由香、何したらいい?」
「じゃあ、たっくんはここ黒でなぞって」
「ネームペンで?」
「んー、ポスカで」
たっくんは頷いて、すでにインクが出ている黒のポスカを持つ。
「これ切り終わったら、どうしたらいい?」
「その辺に置いといて」
「はいよー」
切り終えたハートを机の上に置くと、柊もすぐそばにハートを置いた。
柊にハート、……似合わん。
「みどり、俺にハート似合わないって思っただろ」
「なんで分かったん!?」
驚いてそう言うと、すかさずデコピンが飛んできた。
「あうっ」
中指は痛いです、柊さん。