「まあ、夏で引退の部活ばっかりやし、柊は入らんくてもいいんやろけどねー」

「俺もそう思う」

「そういやトシちゃんは、美術部やったって聞いたことある」

「俊彦が?」


全然想像できない。あの何事にもやる気のなさそうな酒屋の店番が、美術部とか。


「……絶対下手だろ」

「想像できんよね」


二人して頷く。


「とりあえず、何部入るか、考えるだけ考えたらー?」

「……みどりに言われなくても、考えるし」

「うぐっ」


でも、きっと俺は何部にも入らないだろう。


「てか、もうそろそろいいんじゃね?」

「帰りは柊が運転してよー……」

「道分かんねーし」

「……ういー」


仕方ない、というようにヘルメットをかぶる。みどりは顎紐をして、自転車にまたがった。

ヘルメットは手に持ったまま、俺も荷台に乗る。


「……柊さん、ヘルメット持ったままだったら、掴めんやろ」

「……」


みどりに言われて気付くなんて、癪だ。

どうしようかと考えていると、みどりの手が伸びてきて、俺のヘルメットを奪っていった。

そして、振り向いたかと思えば。


「んしょっ」


ポスッとかぶせられたヘルメット。満足げな笑顔。

呆然としていると、みどりの手はまた伸びてきて、ぐっと顎紐をしめた。


「首絞める気か!」

「ばっちりばっちりー。はい出発しますよー」