「そういやさー、柊は部活どうすんのー?」
「……あんの?」
質問を質問で返すと、みどりは当たり前だとでもいうように頷いた。
「だいたいの子は家の手伝いとかあるから、あってないようなもんだけどもねー」
「……ふーん」
担任から渡された校章入りの白いヘルメット。それを持ちながら、俺は自転車を押すみどりの隣を歩いていた。
行きと同じように二人乗りで帰ったらいいと思ったのに、下校するときには他の生徒がいっぱいで。
この町は噂がすぐに広がってしまうだの何だので、学校が見えなくなるまでは歩くことにした。
全然考えてなさそうなのに、それは気にするらしい。みどりの気にする基準が分からないけど、別に知らなくてもいいだろう。
「あるのは野球部とサッカー部と陸上部とバレー部と吹奏楽部とー、あと美術部ねー」
「……そんだけ?」
「うん。男子は野球部とサッカー部が活動しとるかな」
「達郎は?」
「たっくんは一応野球部やね。でも農家の息子やから、手伝いで帰るときが多いんよ」
家の手伝いって、そういう系か。
「みどりと由香は?」
「あたしたちは陸上部。大会にいっぱい出とんのは数人やし、冬の駅伝の人数合わせに出るくらいしか活動ないけど」
そういえば由香も、達郎と一緒に帰っていったから、家の手伝いで大変なんだろう。
「トーキョーでは何部やったん?」
「……バスケ」
「残念やなー、バスケ部はないんよ」
カラカラ、自転車のタイヤが音を立てる。
みどりはヘルメットの顎紐を自転車のハンドルに引っ掛けて、肩に付くか付かないかの髪を小さく靡かせていた。