「でも、森ヶ山線はだいぶ前から廃線になっとってー」

「違う違う、廃線じゃなくて、一部運行停止中なだけやで。確か、台風で橋が流されたんやろ?」

「……」

「あ、そうやった! まあとにかく、結構前に台風がきたときに橋が流されてから、使われてなかったんよ。ここまでは分かる?」


何故か得意げなみどりに、とりあえず頷く。


「数ヶ月前から運行再開のために、線路の工事が始まってさ。それがもうすぐ完成するんやってー」

「……へえ」

「すごいやろー、すごいやろー?」

「あー、はいはい」


適当に返事をしたのに、みどりは嬉しそうに笑う。

いまいち、こいつの生態は謎だ。

っていうか、バネはどこいった。


「でも、間に合うんか? 結構遅れとるって話聞くけど」

「色んなところから人員派遣してもらうんじゃないか、ってパパは言ってたよ」

「すごーい、スミレちゃん物知りやねー」


ボールペン、壊れたままでいいのか。

呆れながらみどりに視線を送ってみるけど、まるで無視。


そうこうしているうちにチャイムが鳴って。


「やばい、ベル席、ベル席! まだチャイムの余韻続いとる、セーフ!」


どこまでも騒がしいみどりは、俺を自分の席から退けて席に着いた。

……ボールペンはこのままでいいのだろうか。