って、それはどうでもよくて。今日はビッグニュースがあるんだった。

トシちゃんにも、早く聞かせてあげようと思って、ペダルを一回踏む。カゴの中に無理矢理押し込んだナイロンの鞄は、コンクリートのでこぼこで、ガタガタと揺れていた。


「おっ、発見」


一筋に伸びた白い煙を見つける。酒屋さんからだということに気付き、さらに確信を持った。

坂はもう終わり。自転車はトップスピード。


「とーしちゃあああん」


風の音に負けないように、声を張り上げる。ごうごう、耳元では風のほうが大きく聞こえた。


「ビッグニュースだよ!」


もう一度叫ぶと、さっきより近くになった酒屋さんから、ひょろひょろトシちゃんが顔を出した。

今日も相変わらず細い。ハーフパンツから覗く白い脚は静脈が浮き出ていて、今にも折れそうだ。髪の毛はボサボサだし、無精髭も生えてる。


「あーのーねーっ」


最後の一押し、とばかりに叫ぶ。すると、もう目前に迫ったトシちゃんが、驚いたように目を見開いていた。


「実は――……」




「みどりっ、前見ろっ!」



普段のひょろひょろトシちゃんからは、想像もつかないような大声。

焦ったような、半分叫んでたようなそれに驚いて、前を見たときには遅かった。