ぼそぼそと柊が何か言っていたけど、聞き取れなかったから放置しておく。
あたしは靴を脱いで、自分の出席番号のところに入れた。
「え、みどり」
「お?」
「そこ、5番」
「うん」
「……出席番号のとこに入れるんじゃねーの?」
「え、うん」
柊が何を言いたいのか分からなくて、首を傾げる。
あ、もしかして、どこに自分の靴入れたらいいのか分からないとか?
「柊は適当に、その空いてるところに入れたら?」
「……あ、うん」
あれ、そういうことじゃなかったのか? でも、他に変なことなんか思い付かないし。
「みどりって、竹内だよな?」
「うん」
靴を入れながら、柊は確かめるようにあたしに言う。
「出席番号5番って、早すぎじゃね?」
「……え?」
思ってもみなかったことを言われた。 “竹内”で5番は早すぎる?
「えーっと、うちのクラス、二十三人で」
「……は?」
「その内の十六人が野口さんやから、多分、その、そういう感じ」
どう言ったらいいのか分からなかったけど、きっと柊が聞きたかったのはこういうことだろう。そう思いつつ、上靴を履く。
柊は一瞬、戸惑ったように動きを止めたけど、またぼそぼそと呟きながら、あたしのあとを追って来た。
どうやら自己解決したらしい柊を見ていたら、いつの間にかあたしを追い越していて。
階段を上ろうとしたから、慌てて連れ戻した。