「職員室とか行かんの?」
「……行っても担任いないだろ」
「そっか」
校長先生とかには会わなくていいのかな、って思ったけど柊は下駄箱を目指して歩いていってしまう。慌ててあたしもその背中を追った。
けど。
「柊、そっち違う違う!」
職員玄関に入りかけた柊の腕を掴む。
張り切ってあたしの前を歩いていたけど、転校生なんだから、どこに下駄箱があるかなんて分からないはずで。
「こっちですよー」
「……」
腕を掴んだまま、下駄箱まで引っ張っていく。
柊は鞄をリュックみたいに背負って、だらだらと歩く。遅刻したことを、もう開き直ってるらしい。
「てか、靴!」
「は?」
「柊、靴、赤!」
「……なんで単語なんだよ」
赤いスニーカーに驚いて声を上げると、柊は怪訝そうに眉間に皺を寄せた。
だってだって、靴は白を基調としたもの、って校則で決められているのに。
「校則違反だー……」
「校則とか、破るためにあるようなもんだろ」
そんな校則知らなかったし、と続けて言った柊に、反省の色は見られない。
今日の柊は、開き直るのが早い。
「だいたい、そんな校則誰も守ってないだろ……」
「あ、三年の下駄箱ここ」
そう言って、あたしたちの下駄箱を指差す。
「まじかよ、全員白の靴かよ、やっぱり俺の常識通用しない……」