思いつくままに言ってみるけど、柊の反応はイマイチ。
そりゃ、高層ビルなんてないし、スクランブル交差点もないし、LEDの信号機もないし。
「でも、桜綺麗やし」
「……」
「秋になったら紅葉綺麗やし、冬はいっぱい雪降るし」
バランスを取りながら立ち漕ぎ。
橋の上を運転していると、風が強く吹き付けてきたものだから、こけないように漕ぐことに必死で口を噤んだ。
つい最近、色を塗り直されたこの橋は、鮮やかな赤い色をしている。
渡り終えると、再び田んぼが広がる。白いサギが一羽、その真ん中に立っていた。
「トーキョーにはないもの、この町にはいっぱいあるやろ?」
どや顔をしようと後ろを振り向きかけたら、またヘルメットを押さえられた。
「前向けっつーの」
「……ぬう」
結局、また大人しく前を向く。
後ろで柊は、そんなあたしを鼻で笑った。
むっとして振り向こうかと思ったけど。
「……たしかに」
ぼそっと柊がそう言った気がして、あたしはすっかり怒る気がなくなってしまったのだった。
「……柊さん」
「……」
「どうすんの」
「……どうするもこうするも」
ふらふらの二人乗りで学校に着いたのは、朝の会が始まったころ。
すなわち、遅刻。