「ふっふー、柊だー」
真正面にいきなり緩んだみどりの顔が現れて、心臓に悪いというか、何というか。
「お前な……」
「ふふん」
「……離せ酔っ払い」
「離さんよー、柊の手やもーん」
「意味が分からない」
「ふっふーん」
小指、薬指、中指。
順番にぎゅっぎゅっぎゅっと握り、さらに人差し指、親指。
そしてみどりは満足したようにふにゃりと笑って、すべての指を自分の指と絡めた。
「ふっはは、おっきい手やなー」
「はいはい」
「ゴツゴツしとるなー」
「あーそう」
繋いだところから、じんわりと温もりが伝わってくる。
開けっ放しの窓から緩やかな風が流れ込む。
二人分の手を翳して恍惚としたようにそれを眺めて、みどりはゆるゆると目を細める。
「っていうか、みどりの髪ぐしゃぐしゃなんだけど」
「ほっほー、ぐっしゃぐしゃー」
「……」
「しゅーのてーはごっつごつーふんふーん」
よく分からない歌を歌いながら手を見つめたままのみどりは、髪を直す気もなければ手を離す気もないようだ。