どうでもいいことを考えながら、ペダルを一回踏む。 ぐん、とさらにスピードアップした自転車。 家に帰ったら、アイスでも食べよう。 録画しておいた昼ドラも見たい。 夜ご飯はハンバーグがいいな。 坂はもう終わり。 自転車はトップスピード。 ごうごう、耳元では風の音が大きく聞こえた。 大きく、大きく、聞こえた。 だから。 「……、みどり」 ――そんな小さな呟きを、聞き逃しそうになった。