それならいっそ、馬鹿みたいに待ち続けようと思った。
そして、そんな馬鹿みたいなあたしを、笑ってくれたらいい。
「……よっし」
呟いて、もう一度息を吸う。
今度は泥の匂いが混じっていた。
一応舗装してあるのにガタガタのコンクリートを勢いよく蹴る。
ちょっとだけ助走をつけてから、ペダルから両足を離す。
長い長い下り坂。
だんだんスピードアップしていく自転車。
風を切る音。
「やっふーう!」
坂を下れば、酒屋がある。
店番のトシちゃんは昔と変わらず、ひょろひょろで。
いつになったら、ちゃんと髭剃りをするんだろう。